「ねえ先生」 私たち以外に誰もいない教室で、たった一人しかいない人に向かって話かける。 教室の、しかもちょうど夕日の当たる教卓に手をついて外を見てる先生。
「先生、どうして私は生徒なんですか?」
ほとんど呟きに似た言葉に律儀に答えようとしていた先生の言葉を遮って、また言う。 「どうして、先生は先生なの?」
さっきの、のらりくらりとかわそうとした答えではいけないのだと悟ったのか、先生は今度は答えてくれなかった。 「先生、どうして……何で、生まれるのが少しずれただけで、こんな、」
痛いくらいに容赦なく目を刺す夕日の中、ゆっくりと近づいて私の肩を引き寄せてくれた先生に従う。 「どうして、こうなっちゃったんだろう」 目の縁の涙の中で乱反射する夕日を、そっと睨み付ける。 どうしたって、私たちの間に横たわる年月の差は、壁となって越えることなんてできないってこと。 |