「」
名を呼べば愛しい者の声が答える。それはなんと幸せなことか。 「元親さま、こんな夜更けに海辺に出るなんて。風邪をひきますよ」
一度は失ってしまうと覚悟を決めた命。 が俺にとって大切な、一番の人間だということは分かっていた。 しかし、それを失いかけて初めて実感したのだ。 「、ありがとよ」
照れたようにうつむいたをそっと抱き寄せ、頬にキスを落とす。 あの時失った左足は、俺が作った義足で補っており、彼女は今も凛として自分で立派に立っている。 あんな大怪我で生き残れたのは奇跡にも等しい、と城の医師が驚いた顔で言っていたのを、今でも鮮明に思い出せる。 「私は、あなたに傍にいると約束しました。その約束を違えることはできませんから」 だから、私はどんなになっても生きると決めたのです。 そう言って笑った彼女の姿に、情けなくも泣きそうになってしまった。 「もう以前のように私の腕でお守りすることはできないけれど、 今度こそは、傷つけることのないようにと優しい目をした鬼は、傍で己を支える愛しいものをきゅっと抱きしめた。 |