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何でもかんでも口に出すのは控えましょう




「幸村―! トリックオアトリート!」 「おお、殿! 菓子でござるな?」 二時間目と三時間目の間の休み時間、十分というわずかな時間に突撃してきた上、さらに お菓子までねだるという傍迷惑なことをしかけたにもかかわらず、幸村はパッと嬉しそうな 表情でお菓子を両手いっぱいにくれた。 (ていうかどうして幸村が嬉しそうなの?) 「やったーい! お菓子貰った―い! ありがと幸村」 「では某も、良いでござるか!」 「もちろん、幸村の為にたくさん持って来たんだから」 「では……トリックオア、ユー!」 幸村の言った言葉に、ぴしりと固まる。どこで覚えてきた、そんな言葉! 私の予想としては、 @猿飛佐助のいらん入れ知恵 A伊達正宗のいらん入れ知恵 B前田慶次のいらん入れ知恵 C鶴ちゃんのませた入れ知恵 の四択だ。 ちなみに幸村自身が考えたという線はない。私はそうにらんでいる。 「ど、どうしたでござるか?」 「いや。ところでその言葉、誰に教えてもらったの?」 「さっきのでござるか? あれは慶次殿が教えをくれたのでござる! そこにやって来た 政宗殿と佐助が少し改めた後、鶴姫殿が”乙女のあれんじ”なるものを伝授して下さったのだ!」 「(全 部 ミ ッ ク ス し て た の か よ !)」 「こう言えば某も殿も幸せになれると申していたゆえ!」 いやいや、そんなわけないだろ。 幸村としてはお菓子が一つも貰えない選択肢しかないのだ。本末転倒もいい所というものである。 「……幸村、ちなみに意味はわかってる?」 「む? ……悪戯か、そなた? …………そっそなた!? はははは破廉恥でござるううぅぅぅぅ!!」 「やっぱりか」 やはり意味までは分かっていなかった。 しばらく幸村は破廉恥を連呼し続け、たまにお館様、某、などという単語を挟みながらなおも 叫び続けていた。 「ぬをおおおぉぉぉ、お館さばああ! 某、それっ、それがし、うをおおお!」 「ちょっと幸村、もうそろそろ授業が、」 「うをおおおおおおお!」 「(聞いちゃいねえ!)」 「お館さばあああ! この幸村ッ! プロポーズの責任を果たす為に!」 「ん?」 「殿を必ずや幸せにいいいいいぃぃぃ!」 「流れがおかしいことに気が付こう幸村!」 その後もチャイムが鳴るまでお互い真っ赤な顔でそれぞれ叫び、止めたりしていた。 ……佐助、政宗、慶次は後でシメる、と心に決めた。