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何事もそうそううまく事は運びません




「……や!」 「てめーはもっと違う登場のしかたはできねェのかっ!」 今回は結構早めに気付かれた。やっぱり太陽を背に人の頭に乗るのは些か無理があったのだ。 視線を真下にやらずとも、土方さんと一体となり長くなった影が目に入る。 「、便所行った時はいなかったはずだ。今日は一体いつから……」 「……本当に? ほんとーに、いなかった?」 「……っ!? まっ、まさか見て……!」 「ないけどね」 「んにゃろっ!」 基本的に真面目な性格をしているから、からかうのがとても楽しかったりする。 「ところで、今日が何の日か、」 「トリックオアトリート!」 「にべもねェな!」 土方さんが改まって言おうとした言葉に先手を取ってみた。 やはり私の言った言葉を私に向けて言うつもりであったらしい。土方さんが 心なしかへこんでいるように見える。 それでもおもむろに隊服の裏ポケットをごそごそと漁り、出てきたガムを 頭上の私に投げ渡してくれた。 ありがとうございまーす、と間延びした返事をしながら嬉々として貰ったガムを 口に放り込んだ。 「―――っ!! うげええ! これ禁煙用ガムじゃないですかあ! うええ苦ああ」 「誰が菓子っつったか」 してやったりといったふうににやりと笑って、地に落ちた私を見る顔が非常にむかつく。 まさかまさかの反撃(?)の味に、あまりのショックでバランスを崩したのだ。 「トリックオアトリート」 「は!? 人にろくなもんも渡してないくせに催促するんですか!」 「あ? 渡しただろうが」 「菓子じゃないって、」 「俺が言ったか?」 「!!」 なんてことだ。なんだか今日は向こうのペースに引きずられてばかりだ。 そろそろこちらのペースに戻さなければ、なんだか居心地が悪い。 「でも、さっき総悟君にさっき搾り取られちゃって、」 「なら、しょうがねェ。てめーで悪戯を受けてもらうしか……」 「たんですけど、総悟君マヨ系のお菓子には手を出さなかったので、はい、 どうぞ。がっつり残ってますので」 「ですよねー!」 どさりと沢山の山のようなお菓子を土方さんの手に乗せて、嫌味のような笑顔を浮かべた。 もちろん土方さんが甘いものをあまり好いていないというのを把握済みで、だ。 私としては、口内に残る苦みの仕返しには、まだまだ足りないのだけれど。