鬼のグルメツアー
〜毛利軍〜
「元就さま、日輪はもういいですから。私いい加減朝食を食べたいです」 「食べておればよかろう。我の邪魔をする出ない。……おお、日輪よ……」 「いや、だからあなたの血液が私のご馳走ですから」 「その辺の兵でも捕まえて喰ろうておれ」 「や―…やっぱり力のある人の血がいいです。健康ですし、美味しいので」 「……勝手に吸っておれ」 「え、じゃあ良いんですか! やったあ!」 「……元就さま、非常に飲みづらいんですが」 「静かに食事もできぬか」 「や、あの。ものすごく飲みづらいんです。手を広げたまま日輪拝んでいるあなたから どんなふうに吸血をしろと?」 「今はやりの立ち食いというやつだな」 「元就さまは蕎麦ですか。でもどちらかというとオクラでは」 「……一度躾が必要であったか」 「ごめんなさい、でも今のは元就さまが、」 「静かに啜っておれ」(ぎゅっ) 「!」 元就さまの血は冷血なんてものではなく、暖かくて微かに太陽の優しい味がします。
鬼のグルメツアー
〜長曾我部軍〜
「相も変わらず、馬鹿の一つ覚えのように海にしかおらぬな貴様」 「毛利!? なんでここに!」 「……こんちわー」 「お前はなんでそんなにぐったりしてんだ!」 「いやー…なんかホント具合悪くって」 「どうもこやつは海に弱いらしくてな」 「ならなんでこんなとこまで来てんだ、船の上だぞ」 「……無理矢理連れてこられました」 「何、こやつのしおらしい姿が見たくなってな」 「鬼だ! 俺よりも鬼らしい鬼がここに!」 「ううう、元親、血を、私に血を!」 「いきなり何だお前も!」 「私には今、元親の塩辛くって生命力に溢れた血液が必要なの!」 「おいちょっと待て、飲んだことあんのか……?」 「いや、想像だけど。想像だけでも美味しそう……」(じゅるり) 「おい、毛利。いったいどんな躾け方してんだてめえ」 「我の血とその他の血を飲み比べたいそうな」 「いや、”そうな”じゃねえだろ!」 「いっただっきまーす!」 「くんなあああ!」 「んんん、いやあ美味しかったです! 意外とこう、甘い感じが」 「……」 「どうした、何を呆けておる長曾我部」 「いや……。吸血って、気持ちよかったんだな」 「……? そうなんですか」 「!」(そうであった!) 「もっと飲んでくか?」 「え、いいんですか?」 「な、ならぬ! 早々に帰還するぞ」(これ以上奴に良い思いをさせてなるものかっ) 「もう帰るのか?」(にやにや) 「えええ、どうしたんですか急に。まだ飲み足りないですよう」 「そなた、我の血だけでは満足できぬと言うか」 「……! できます!」 「また来いよ」(おーおー、お熱いこってェ) 我の血と飲み比べさせ、我が至上であると分からせようと思ったが、なかなかどうして難しいことぞ。
鬼のグルメツアー
〜石田軍〜
「貴様! 秀吉様の御身体を汚そうと……!」 「ちょ、違、」 「言語道断!」 「ひええ元就さまあ!」 「……ふむ。この茶、薄いぞ」 「流石、元就君には分かってしまうか。良い舌を持っているね」 「当然だ」 「元就さま! こんな近いところにいるのに遠い! 元就さまが遠い!」 「黙れ貴様! 秀吉様を狙うだけでなく、半兵衛様の前でまで! 騒がしいぞ!」 「いや、三成。あんたもうるさいから! ていうかあんたがうるさいから!」 「待て貴様! 私が直々に手を下し……閉じ込めてやるッ」 「何か大分いつもと違うだろあんた!」 「ひええ元就さま捕まっちゃったあ助けて!」 「何だ、もう捕まったのか。忍が聞いて呆れるな」 「だって元就さま! あり得ないんです、この人忍より速い!」 「黙れ!」(私が近くにいながらなぜ他の男を見る、なぜ私を見ようとしない!) 「ひええええ」 「毛利! この忍の躾を私がしてやる。渡せ!」(私が貰い受けてやる! 逃がさん!) 「嫌だあ渡さないで元就さま!」 「貴様に拒否権などない!」(私を見ろ! 私を拒むな! ……私にも懐け!) 「横暴な!」 「……なんだろうね元就君。僕には三成君の心が手に取るようにわかるよ」 「奇遇だな竹中。我もあ奴の心情がだだ漏れであると思っていたところだ」 ‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐ あれ、こいつら途中からグルメツアーと違うことになってるよ。
いつから諸国漫遊の話になった……?